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< IAG ARTISTS SELECTION >
池袋回遊派美術展2022
22/05/14[土]-22/05/18[水] @ 東京芸術劇場 5F GALLERY1

石田 麻衣 / Mai Ishida 

● 主な技法:アクリル絵具、岩絵具、粘土、麻布など

日本の伝統文化とされる書道の持つ美しさ。平らな紙面に墨の濃淡や潤渇により生み出される立体感、何も文字を置かない余白を作る事で生まれる間は、空気を引き締め凛とした静寂をもたらす。
書道の規律の中に垣間見る自由な創造性を見出し、書道から得た構成を取り入れ、伝えたい世界を可視化する。
古代というものを想像する時、もしかすると「全てあった」のかも知れないと思う。
失われた物が持っている本来の意味や価値を、今この世の中で補うべく私は深い瞑想に入り、自分でも気付かない様な感情を表現すべく感覚の命令に従って筆を取る。
私は、表現する事で少しでも安心して生きられる空間を作りたい。

○作品に文字を入れることについて○
およそ1300年前、奈良時代から和歌は詠まれていた。
和歌という少ない文字が紡ぐ大きな世界観は現代まで受け継がれているが、その本当の意味を、現代人にも理解できる何かが、失われつつある「本来の意味や価値」がそこにあると私は考える。

万葉集は様々な身分の人が詠んだ歌が収められていると言う事を考えると、文字はその時代から広く使用されていたのではないだろうか。江戸時代には、日本の識字率はおよそ90%とも言われ、世界一を誇っている。
日本人の生活は文字と共にあったと言う事である。

文字の歴史に迫れば謎が深まるばかりだが、ただ一つはっきりと言える事は「仮名」は日本独自の文化であるという事だ。
私は日本の「仮名」という文化に焦点を当て、作品に意思をもたせる。

なぜ仮名は美しいのか。
それは、仮名特有の柔らかい曲線、墨の濃淡、紙の余白、文字の連綿にあると考えると共に、文字を「人」に置き換え、人が生きる意味を問う。

縦書きの文字は、上の文字を受け、その流れで次の文字を書く事の繰り返しである。上下の関係のみならず、行を見たときにそれと隣り合う文字の動きまで読み、次の行の文字を存在させる。

そこには天地を繋ぐ誓いと思いやりがある。周りとの調和を図り自己を存在させ、一つ一つの文字に存在の意義がある。

一音に一字の字母を持つ現在の「ひらがな」だけではなし得ない事を、変体仮名は可能にし、それは、文字の流れに抑揚を与え鼓動を感じさせる。

連綿もまた、上の文字を受け連綿線を用いる。
文字を「繋げる意味」があり、連綿で文字を書く。
更に墨の潤滑が加わる事により生命の息吹を思わせる。

この様に書かれた文字が構成する紙面の「余白」は文字が存在することで生きてくる。
そこにもまた、生命がある。

文字はただ記録する為、読むために書かれていただけでは無く、そこには文化と芸術が存在していた。

文字には、生命の存在意義や、思いやり、計り知れないこの世の奥深さがあると私は思う。

石田 麻衣

石田 麻衣 Profile

1980年 静岡県生まれ

岐阜女子大学文学部国文学科書道東洋文化コース 卒業

◆受賞歴
IAG AWARDS 2023 入選

◆展示歴
○2020年10月〜半年間:solo exhibition「ハリボテノセカイ」サナギ新宿
○2021年グループ展:「kowaii展」「アッパレアートパレード」
「Energy展」「たんざく展」「アートアートアート」
「シタマチアートパレード」「KENZAN2021」「KENZAN contemporary」
「Mai Ishida solo exhibition」THE KANZASHI TOKYO ASAKUSA
○2022年グループ展:「IAG Artists Small Works」「New Surface展」「アートフルに暮らす展」「池袋回遊派美術展」「若手女流画家6人展」「たんざく展」「アートアートアート」「たんざく展」「KENZAN2022」「Tokyoアートシーンの今展」「東武秋の絵画市」「東武絵画市」「アートゲンダイ」
○2023年「アートのチカラ」「アートアートアンテナ」「岐阜アートギャザリング」「IAG AWARDS 2023」「たんざく展」「そのつづき展」「マウン展」「わたしたちの東京案内」「KENZAN2023」
○2024年「YOUNG ART HAMAMATSU Vol.2」

◆インフォメーション
高等学校第一種書道、国語の教員免許取得。
文部科学省後援毛筆書写技能検定1級合格。最高位指導者の証取得。
文部科学省後援毛筆書写技能検定1級連合会会長賞受賞。大学卒業後書道講師として高等学校勤務しながら競書雑誌常任理事として雑誌手本や審査員を務めると共に2018年まで書塾経営。
以降、高等学校で書道講師を続けながら、書の技法を基に創作活動を始める。