松尾茉実 / Mami Matsuo
● 主な技法:編み、オリジナルテクニック
喪失が残していく空洞には形がない。何者にも埋めることはできないものだ。失くしたものを思い出そうと空洞を包むように探ると、見えなかった穴の輪郭が浮かび上がる。しかし全貌は決して見ることができない。この感触を追いかけて輪郭を浮き彫りにできないかと考えた。
身体と素材が密接に関わるアームニッティング技法を使い、感触をひと目ずつ編んでいく。自分と空洞の境をなぞるように編み起こし、不確かだった空洞と対峙する。埋まらぬ穴が私の中にあることは絶望ではない。次へと進むための微かな希望だ。
繭、女性器などを想起させる、生き物を包み覆う形状をイメージ。
重みと浮遊感、柔らかい体温と畏怖の両立を意識した。
これまで女性性、消費される側の性であることなどをテーマとし制作してきた。
今回は喪失が大きなテーマだが、背景として女性特有の苦しみ、空虚感、不安感を意識している。
ストッキングは女性の生きづらさを象徴するもののひとつだと思う。
本作品では、それを歪め変質させることで抑圧へのアンチテーゼを表現した。