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池袋アートギャザリング公募展
IAG AWARDS 2020 EXHIBITION

美術作家
小野 仁美 / Hitomi Ono

● 主な技法:絵画

 私の制作はイメージやエスキース、クロッキーなどから頭の中や紙の上で計画して始まるものではない。始まりは無 作為に絵具が落ちる、または流されたタイミングから。パネルに湿って張り付いているポリエステルの布に色が染み込 み制作が進んで行く。色を落として、さらに表情や深さを加えようとする時には、上から異なる色や水を落として、元々 落としていた色を押し流す。1日の制作に区切りがつけば、制作途中であっても作品の表面は乾き、改めて描き始める時 にはまた湿らしてを繰り返す。

 混ぜられた絵具が布に染み込み、画面の表面で伝わってゆくとき、光がプリズムの中を通過し分光されるときのよう な、色の縞が現れてくることに気付いた。色の縞は乾き切った時にそのまま定着するようだとも。綿布を使用していた 時には水分のみの層まで現れていて、その部分に対しては居心地の悪さを感じてしまった。色とそうでない部分の境界 に作品の外から光が当たって反射し際立つ。色が奥から吐き出される。言い換えてしまえば、息を吸って吐くような感 覚。その感覚を受け取りながら、また新たに色を重ね、染み込ませる。その行為を何度も。やがてそれは私が作品に対 して求めている、水面を眺めている時の映っている景色や物の影を美しく思い、それを見ようとしているのか、または 湖の奥底を探り見ようとしているのか、それとも水面そのものを見ようとしているのか、といった見るものの焦点の移 り変わっていく様子に繋げていく。

 私が作品の画面に求めている深さの距離間はどれほどだろうか、と考えることがある。深さにつなげるものとして川 で例えるならば、淵という部分があり、瀬と反対で、流れが穏やかな深みのある場所である。静かで淀んだ部分もあり、 底からの光の照り返しも鈍くぼんやりとなる。私が求めている奥行きというものは、どこまでも透き通る深さをたたえ た水面のことだろうか。それとも瀬のように、ざわざわと不安定な揺らめきを持った境界なのだろうか。

 私の個人的な触覚であり、他人には伝わりにくいものであると感じているが、最近では色を押し流す遣り取りは動物 の毛を梳き流す行為にも似ていると感じる。これは私が猫の毛の見え方に興味を持っていたことにつながる。猫の毛は 猫の皮膚からふさふさと生え、私たちに見えているのはその毛先。加えて、毛と毛の隙間をたどってわずかに白に近い 毛の根元や淡い皮膚の色が見える。手のひらで毛先を押し返すように、もしくは掻き分けるように触ると、毛の根元(皮 膚)まで辿り着く。毛と毛の間には空間があり、毛先と皮膚という二層の境界があるのだと気付く。ここで視覚的にも レイヤーのような見え方をしているのだと頭の中でも思い浮かべる。この二層間のずれた見え方に心が惹かれ混乱し、 今のところは少しでもその触れてしまいたい欲求を叶えてくれる画面に辿り着けないだろうか、とワクワクしている。

小野 仁美

小野 仁美 Profile

1993年 東京都生まれ

武蔵野美術大学大学院 造形研究科 修士課程 美術専攻 油絵コース 修了

◆受賞歴
平成29年度 武蔵野美術大学卒業・修了制作展 研究室賞
80周年記念武蔵野美術大学大学院修士課程奨励奨学金 認定
第32回ホルベイン・スカラシップ奨学生 認定
一般財団法人守谷育英会修学奨励金 奨励賞
ワンダーシード2016 入選

◆展示歴
2019.
新宿クリエイターズ・フェスタ2019「ビヘイビア」 ヒルトピア アートスクエア/新宿
小野仁美展「有るか無きかの」 space2*3/日本橋
2018.
池袋アートギャザリング 北嶋勇佑プロデュース企画 小野仁美 作品展 リビエラ カフェ green style/池袋
Roppongi α Art Week「小野仁美展」 六本木605画廊/六本木
「Slide,Flip, and Turn / スライドフリップ アンドターン -7人のアーティストブック展-」 武蔵野美術大学美術館図書館 図書館大階段/小平
他展示多数。

◆インフォメーション