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KENZAN202222/08/10[水]-22/08/14[日] @ 東京芸術劇場

淵上直斗「 alone II 」

淵上直斗/alone II/exid55330wid52184
  • 淵上直斗/alone II
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ID
exid55330wid52184

技法
キャンバス、アクリル絵具、アクリルガッシュ、ポーリングメディウム、PVA、シリコンオイル、モデリングペースト、ワニス

サイズ
F6号

制作年
2022

制作点数
1

Edition

額装
無し

特記事項
私が制作しているのは、人の内面あるいは人と人の間に現れる"歪み(HIZUMI)"である。歪みは人間の本有的な孤独や自身と世界との乖離、死生観である。孤独や劣等感は人間がいるからこそ感じるが、それを癒してくれるのもまた人間である。私は歪みを通して人間を見つめ本質を探究したい。また、私たちが生きる日本の鬱屈とした空気、時代性を作品を通して切り取りたい。

私たちが生きる現代は、誰もが悩みを抱えており自ら命を絶つ人が後を絶たない。特に若い世代ではこれが顕著である。先進国(G7)で見ても日本は非常に深刻な状況にある。
上記の主要な原因は鬱病である。日本では精神疾患に対する知識不足や偏見、病院への抵抗感等の空気がいまだに存在している。
これらの事実やSNSを見ていて感じるのは、診断を受けておらず治療に至っていない人が潜在的に膨大な数いるのではないかということだ。

こうした社会の中で生きてきた私も、鬱病の当事者である。漠然とした希死念慮や抑鬱感を長期にわたり感じており、この感情を誰もが抱えている一般的なものであると信じていたが、それは"歪んだ"認知であった。それに気づいたとき私は自分と世界との乖離を強く感じた。この乖離を自身と世界との"歪み"と捉え、それを表現し始めたのが制作のきっかけである。

制作の方法として、絵具とメディウムを混合した流動的な画材を使用し、化学反応や支持体を傾けて流すなど、偶然性の強い手法をとっている。この手法により作品は再現性を失う。ここに孤独の裏返しである人の唯一無二性を重ね視ているのだ。また、人の精神の流動的で曖昧なさまを、形の定まらない流動的な画材で表現したいのかもしれない。
制作過程の偶然性の一方で、計画性や必然性も私の作品には含まれる。絵具とメディウムの調合比は大学で学んだ物理学の数値的計測や論理的思考を生かし、様々な実験を繰り返すことで、最適な調合比を発見した。また、絵具やメディウムは0.1g単位で計測している。流動的な画面は、流すだけでなく模様を潰すなどの操作を加えた上でさらに流すなど、必然と偶然の繰り返しともいえる。

私のもう一つの制作目的は、自分と鑑賞者の孤独からの解放である。ネガティブな感覚である歪みを抽象的に表現することで、より普遍的で鑑賞者にフィットした体験を提供したい。一種のカタルシス効果ともいえるだろう。辛い時や苦しい時、本当に励ましてくれるのは前向きな応援歌ではなく、暗く悲しい、苦しみを歌う曲ではないだろうか。無責任な元気づけより、ここにも苦しんでいる人がいるという声を上げること、それが共感を生み孤独を和らげられるのではないか。私の作品が、観た人の心の支えとなれば、自分と向き合うきっかけとなれば、幸いに思う。

【作品説明】
人の感情は、どんなに親しい友人、家族、恋人であっても当人以外には理解できない。人によって育った環境や価値観等が違い、同じ事象を体験したとしても同じ感情にはなり得ないからだ。また、〈私〉は〈あなた〉にはなり得ない。そもそも原理的に理解できないのである。これは哲学者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン(Ludwig Wittgenstein,1889-1951)の考えにも通ずる。人はどうしようもなく孤独なのだ。

販売責任
JIAN >特定商取引法上の表記

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