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KENZAN202121/09/22[水]-21/09/26[日] @ 東京芸術劇場

画家
岡本 博紀 / Okamoto Hiroki [Gallery1]

● 主な技法:ドローイング

 私は「記憶」をテーマに作品を描いています。人間は生きていく中で様々な取捨選択を強いられますが、これらを続けていく中で次第に自己や人格が形成されて行き、成功や失敗の経験を得て社会の中で成長をしていくことになります。
 ですが、その選択の中で切り捨てられていったものは、全くの無になるということではなく、頭の中の片隅で塵や埃の様になって積もっているのではないかと思うのです。

 「塵や埃」と言うと汚いと思われるかもしれませんが、例えば埃というのは様々な色の繊維が集積され結果として灰色に見えているだけなので、元を辿れば一つ一つのしっかりした色を持った存在であると言えます。私の作品はグレートーンを背景としたものが多いのですが、それは様々な色を持った記憶が複雑に頭の中で絡み合って結果的にグレートーンとして反映されたものになっています。

 そうした朧気な記憶をモチーフにしているので描かれる対象は具体的な形を成していなかったり、ぼやけていたりします。人によっては、作者の想定しているイメージと全く別のものに見えることでしょう。
然しこれは鑑賞者の方々に全てを委ねるということではなく、描く対象を記号化し作者と鑑賞者の間にある共感性を推し量る行為でもあるのです。私の描く作品は、「私はこう思ったけど言われてみればそうしたイメージもあるな」という共感性を引き出すための触媒です。勿論、「いや、私はそうは思わない」「その印象はなかった」と思う方もおられるでしょう。それは至極当然なことで、寧ろそうした方々によって、別なる新鮮なイメージが発掘されることも含めた作品となります。

 私がこうした作品を描くのは、アートというものの魅力が自己完結したものではなく、自分の認識を一歩超えた先(認識の外側)にあるのではないかと感じているからです。そして、こうした絵を描くことで僅かながらでも、鑑賞者の方々と絵を通して共感することが出来れば、それが一番の幸いとなるでしょう。

岡本 博紀

岡本 博紀 Profile

1990年 大阪府生まれ

2015年 大阪芸術大学大学院 芸術研究科 絵画領域 修士課程 修了

◆受賞歴
2015年 大阪芸術大学大学院修了展 塚本英世賞
2018年 いろやの0号展 ピカソ画房賞
2020年 日本文藝アートコンペティション 奨励賞
2020年 ヤングアーティスト公募展『いい芽ふくら芽2020』 八犬堂ギャラリー賞
2022年 いい芽ふくら芽in Tokyo 優秀賞
2023年 ZEROTEN2023-Aichi- GALLERY龍屋賞

◆展示歴
2017年 6月 第35回三菱商事アート・ゲート・プログラム (東京) 入選
2019年 7月 「ドローイングとは何か」展 入選(銀座/ギャルリー志門)
2021年 6月 個展『えもいわれぬ』(泉大津/ギャラリースバル)
2021年 9月 線を引いて一線を画す-Draw The Line-(松坂屋上野店)
2021年 10月 UNKNOWN ASIA 2021 (グランフロント大阪)
2022年 4月 個展『朧光-おぼろのひかり-』(大阪・本町/GALLERY MAISON D'ART)
2022年 6月 個展『半透明な季節』(東京・矢口渡/Gallery futari)
2022年 8月 個展『-折々の旅-』(東京・京橋/八犬堂ギャラリー)
2023年 1月 ONE ART TAIPEI(台湾・台北)
2023年 2月 ART!ART!OSAKA(大丸梅田店)

◆インフォメーション
-作品について-

つけペンと水性インクを用いて伝統的な文様の一つである「青海波」を描き、『風景と記憶』をテーマにした作品制作を行っています。文様の連続性を画中に組み込み、空間的存在である風景に時間の流動性を組み込むことが主たる目的です。
記号化された風景を描き、空間と時間の融合を試みる中で、普遍的な風景に個人的な体験である『記憶』を内包出来れば、と考えています。

また近年は画面内におけるレイヤー(層)を意識した平面や立体に取り組み、より深く空間と時間の関係性に着目しながら作品を制作しています。