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世界という海で
木白 牧 個展
23/12/03[日]-23/12/09[土] @ Cafe&Gallery KONOYO

木白牧 / Maki Kishiro 

● 主な技法:アクリル画をベースにしたミクストメディア

木白 牧 個展
「世界という海で」

本個展のテーマは「俯瞰図」である。

生物とは、繋がり合い、継代と進化を重ね、時間の海をどこまでも流れていく舟のようだ。
この世界は目前に見えている姿が全てではない。万物の根源となる微小粒子を始まりにして細胞→個体→社会や生態系などと、幾つもの階層を重ね存在している。木白の制作の根底にあるのは世界(自然界)や生命へのリスペクトと探求であり、獣医学出身の知見を糧に自然界の秩序を俯瞰し生命の本質を追求する作品制作は、一種の俯瞰図の完成が到達点であるのかもしれない。

俯瞰とは、高いところから物事を見下ろす事、あるいは比喩的に広い視野で全体を把握するという意味で使う。日本美術史においても俯瞰図的な絵画がいくつか存在し、その一つに参詣曼荼羅がある。寺社が勧誘活動の一つとして使用した絵画であり特有の空間構成を示す。山、街、海を一図に収め、そして天空に日輪月輪を配すことで歳月の経過や空間の永遠性を表わし、絵画の中が自己完結した小宇宙であることを示す。そして人をその世界に誘うのである。霊山といった自然物を信仰対象に据えたものもある(*)。

木白の前身は鯨類調査員であり、クジラを追いかけ人の生きる大地とは隔絶された大海原を航海していた。空と海に取り囲まれた単調な世界において、時折水平線上にぽっかりと白昼夢のごとく山が姿を表した。そして近づくほどにその裾が広がり、街並みが姿を現した。冷たく無感情な海に捉えられた者にとって、人が暮らす領域である陸地の光景は暖かく、そこで生きられる事のありがたさに胸が震えた。

共に空、山、街、海で構成される信仰世界の創造物である参詣曼荼羅と現実世界が脳裏で重なりあった。それが本個展のテーマのベースとなっている。

日本美術史の参詣曼荼羅、自然科学の知見、社会問題、作家の文脈、それらを混合し再構築した作家独自の俯瞰図、小宇宙をどうぞご高覧ください。

作品については、代表作の「大地の方舟」ほか、その原型となった旧作、他、海洋プラスチック問題といった近年の自然界の異変に焦点を当てたものなどをセレクトしました。

(*):「社寺参詣曼荼羅」(2023年11月29日10:02 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

木白牧

木白牧 Profile

1975年 滋賀県生まれ

2005年 大阪府立大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程(現 大阪公立大学) 修了

◆受賞歴
2023年「いい芽ふくら芽RS」優秀賞
2023年「windfall gallery 2周年記念サムホール公募展」windfall gallery賞
2023年「池袋アートギャザリング公募展 IAG AWARDS 2023」準漫喜利大賞
2021年「Any Kobe with Arts 2021」Gallery10賞
2021年「第3回公募アートハウスおやべ現代造形展」入選
2020年「池袋アートギャザリング公募展 IAG AWARDS 2020」入選
2019年「第4回星乃珈琲店絵画コンテスト」優秀賞(土方明司賞)
2008年「第21回日本の自然を描く展」上位入選

◆展示歴
2023年 2人展「潮目のように」、新宿眼科画廊、東京
2023年「IAG AWARDS2023 EXHIBITION」、東京芸術劇場、東京
2023年「New Power展 Vol.4」、ギャラリー自由が丘、東京
2022年「28室のGALLERY」、ホテル北野プラザ六甲荘、神戸
2022年「Any Kobe with Arts 2022」、MRSX(建栄)ビル、神戸
2022年「KENZAN2022」、東京芸術劇場、東京
2021年「SANGO展」、Picaresque Art Gallery、東京
2020年「IAG AWARDS2020 EXHIBITION」、東京芸術劇場、東京
2019年「Independent TOKYO 2019 」、ヒューリックホール、東京

◆インフォメーション
日本人が抱く自然への共感や崇拝などの精神に、獣医学や鯨類調査員に携わっていた経験から得た自然科学の視点を加え、自然界の秩序や生命の本質を俯瞰した表現を模索している。具体的には、細胞→鯨(個体)→地図(社会)という自然界の階層を貫くモチーフを並列に使い小宇宙を表現。
アクリル画をベースに上記モチーフと、日常生活の図像や廃品など時代を表わす素材を使ったミクストメディアの半立体平面作品を作っている。