ワタナベ ユウヤ / yuya watanabe [Atlier EAST]
● 主な技法:日本画
ワタナベ ユウヤ Profile
2000年 宮城県生まれ
2025年 東北芸術工科大学 芸術工学研究科修士課程 芸術文化専攻 絵画研究領域 卒業
◆受賞歴
2016年 西会津国際芸術村公募展 西会津町商工会長賞
2017年 第80回 河北美術展 新人奨励賞
2017年 西会津国際芸術村公募展 西会津町長賞
2022年 第83回 河北美術展 入選
2023年 第84回 河北美術展 入選
2023年 KENZAN2023 八犬堂賞
2024年 第85回 河北美術展 東北放送賞
2024年 トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展 入選
2025年 第86回 河北美術展 河北賞
◆展示歴
2021年 KENZAN2021(東京芸術劇場内)
2021年 秋の讃歌(東京九段耀画廊)
2021年 メルトメイト (上山市空き家)
2021年 KENZAN2022 (東京芸術劇場)
2022年 グループ展「秋の讃歌」東京九段耀画廊,東京
2022年 選抜展 「対の世界」東京九段耀画廊,東京
2023年 「KENZAN2023」東京芸術劇場,東京
2023年 グループ展「冬の風景展」鈴画廊,東京
2023年 グループ展「冬物語」東京九段耀画廊,東京
2024年 KANZEN-完全-大宴会的美術展 伊勢丹新宿店
◆インフォメーション
幼い頃から、降雪を見上げることが好きでした。見上げ方にも少し拘りがありました。まず、手を双眼鏡みたいな形にして眼前に置きます。そのまま空を仰ぐと、視界の端から建物や群像が遮られ、白雲と雪片だけの世界になります。私は、漂白された虚空に散りばめられた結晶の一片となり、共に天空を浮遊していました。
降り積もる雪、地平線と混じり合う闇夜、埋もれかけのガラクタ。「lost senses」の事象はそれが全てです。それら全てが私であり、私が過ごす現代世界です。
私は「ミレニアムベビー」と呼ばれる西暦2000年に生まれ、東北で義務教育を就学し、大学院を修了するまでに「震災」や「パンデミック」と言った天災を経験してきました。同時に「教育」の側面は「ゆとり世代」から始まり、「さとり世代」「Z世代」といった多くのラベリングを持つ世代の一人でもあります。私含め、同期間の世代は上述の様な体験の元、特異な人格形成を持つ世代かもしれません。
多層化されたラベリングは、私達の本質を形骸化させるのではないでしょうか。lost senses シリーズは「自己疎外」を題材としています。「自己疎外」とは、G.W.F.ヘーゲルやカール・マルクスなどが提唱した用語として知られています。二人の「自己疎外」の内容には、ある程度違いがありますが、要約すると社会関係の中で自己の個性や人格が埋没し、主体性を失った結果、他者に限らず自分自身を「疎遠」な存在と感じてしまう状態のことを指します。昨今は自ら考え行動する機会を得ることは困難でしょう。自身も常に「自己疎外感」を感じ生活してきました。私は「自己疎外」を脱去した状態とは「自立」であると考察しています。「自立」とは、自ら「選択」して「行動」できるようになることと定義しています。
雪の結晶が一まとまりの水から分裂して幾つも生まれるように、知識や経験を積む程、複数の自我が存在するようになります。物事を決める際などに多数の自己が会話をしだし、正解を導き出そうとします。答えを出すことに時間がかり言葉に詰まることも多々あります。しかし、より高次な個人を目指すため、今日も思考を積もらせていきたいです。