今福 康介 / Imafuku Kousuke
● 主な技法:キャンバスにアクリル絵の具 / 点描
雨と傷
果てしなく広がる大地に植物が繁り、花が咲き、やがて生き物が活動をはじめた。草木、虫、鳥など数えきれない命が存在する中、私たち人間は文明を築き、繁栄と衰退を繰り返してきた。過去から現在に至るまで、人は集団をつくり、それが村になって国がつくられ、国同士の戦争があった。人の営みの中で喜び、悲しみ、憎しみなどの様々な感情が生まれては消えていく。私は無数の人間が抱く、様々な感情は記憶となって、大地に宿ると考えた。私たちは生まれ、いずれ土に還る。それは花も虫も動物も、国でさえも同じである。その繰り返しの中で、星の数ほどに限りない生き物の記憶は、大地に傷を残し、それを癒すかのように雨が降って、再び命がはじまる。その一瞬の静寂と騒音を表現した。
炎と灰
私たちの生まれてから死に至るまでの過程はまるで炎。はじまりは小さく、弱々しく、温かく、柔らかい。やがて炎は大きく、力強く、華々しく広がりを見せる。そして再び小さく、穏やかに落ち着き、最終的には消える。それは人間に限ったことではなく、全ての生き物にも同じことが言える。生き物は限られた時間の中を必死に生きる。炎を燃やし輝く。そんな無数の命のはじまりから終わりを点描で表現した。
大地の歌
今現在を生きる私たちが生まれる遥か昔から大地があった。そして大昔から現在に至るまで、膨大な時の流れの中で、無数の生き物が生まれ、そして死に、大地に還る。私は生き物が死に、そして大地に還った時、その生き物が生涯をかけて背負ってきた傷(記憶)が大地に宿ると考える。つまり大地には多くの生き物の傷(記憶)が長い時の中で蓄積されていると。長い時の中で大地は聞いた。ある時、1人の人間が、大切な誰かのために歌った歌を。その声を。1つ目のモチーフは、遥か昔から現在に至るまで大地に蓄積された生き物たちの傷(記憶)である。2つ目のモチーフは、大地が膨大な時の流れ中で「一瞬」聞いた、1人の人間が大切な誰かを思い歌った歌である。2つのモチーフの内、一方は限りなく広いモチーフに焦点を当て、もう一方は限りなく狭いモチーフに焦点を当てた。この2つのモチーフを同時にキャンバスに点描で表現した。
今福 康介 Profile
1989年 静岡県生まれ
静岡大学大学院教育学研究科 修了
◆受賞歴
2017年 美術新人賞 デビュー2017 入選
2022年 IAG AWAROS 2022 入選
◆展示歴
2014年 ギャラリーとレンタル暗室とりこ 静岡市(同2015年)
2014年 elle a boode Gallery 静岡市
2017年 フジヰ画廊 銀座
2018年 フェルケール博物館 静岡市
2021年 ギャラリー十夢 静岡市
2022年 東京芸術劇場 池袋
◆インフォメーション
今福康介と申します。静岡県出身です。
私は新印象派、シュルレアリスム、フォーヴィスム、カラーフィールドの作品に影響されて制作しています。今回の出品作品及び参考作品は生き物の記憶の蓄積をテーマに描いたものになります。
また、私は絵画の他、音楽と運動(長距離走)が好きです。
音楽的な感覚や運動することで得られる感覚が私の絵画制作に繋がって、
作品に「なにかしらの霊性を宿すことができればいいな」と考えます。