Mizuki Matsuoka / Mizuki Matsuoka
● 主な技法:彫刻
・コンセプト
本作は作り手の造形物(木工作品)をアプロプリエーション(流用)し、フォルムとそのものが持つイメージを記号として捉え、そのものが発する *アフォーダンスから、インスタレーションとして再構成した作品です。
作品提供者の作り手の造形物は、端材という制約の中で制作するというルールだけが存在し、一貫性がなく即物的なものが多い。造形に合わせた製材はせずに、20種類ほどの木材の端材から選び、手に取った時のインスピレーションから制作を始める。最初に材から最大限取れる、つぼ(掬う部分)の形を作り、必然的に柄(持ち手)の長さは決定される。中には用途を度外視した造形もあり、端材という制約から生まれたそれは、整頓されておらず曖昧な形をしているが、つぼ(掬う部分)と柄(持ち手)のようなものがくっ付いていれば、匙として一瞬感じてしまうのは、私たちはそういった曖昧さを記号に捉えて共通の名称で呼んでいるように、これまでの経験(個々の)と本作からのアフォーダンスによるものだと言える。
台座に配置されたそれらは、主体であり作品全体の * シグニファイア でもあります。
雑然と並べられた匙を見て鑑賞者は、一旦は匙と認識するが、日常から分離された台座での展示がその知覚を曖昧にさせる。匙としての記号を漂わせながらも、周りの作品群との相互作用で、”これは何かを掬うもの”と私たちにアフォードしてくれる。
この台座と配置はアフォーダンスで言うところの“環境”を表しています。
そして“環境”は私たちにアフォーダンスします。
これまでの自身の経験と本作を通しての体験による新たな*可能性の発見と、大量生産された既製品のイメージではなく、素材の性格に則して、偶発的に生まれた造形物を扱うことで、作り手とアートの関係と著作性について探る試みです。
・作品解説
台座に雑然と並べられた匙を見て鑑賞者は、一旦は匙と認識するが、日常から分離された台座での展示やインスタレーションがその知覚を曖昧にさせる。その作品群の中に点在する匙のような造形物、が匙としての記号を漂わせながらも、周りの作品群との相互作用で、”これは何かを掬うもの”と私たちにアフォードしてくれる。
※アフォーダンスとは認知心理学者J・J・ギブソンが提唱した「与える・提供する」という意味の”afford” から由来する造語で、
物や環境が動物(人)に対して特定の行為や意味を促す影響力のこと。
私たちが認識している事象は価値や概念を経験により知っていたのではなく、
あらゆる*可能性をそのものが既に情報提供しているという考え方です。
※シグニファイア : アフォーダンスによる意味や行為を誘導し知覚させるきっかけやサインのこと。
Mizuki Matsuoka Profile
1992年 東京都生まれ
東北芸術工科大学 卒業
◆受賞歴
◆展示歴
2019年 第17回公募ZEN展 @東京都美術館
2022年 個展 (無題)Affordance @#90
◆インフォメーション
既存の光景や物を言葉や配置の仕方で、概念や価値を一度解体し、再認識したときに元のイメージとの差異はどのくらいあるのだろうと考えるようになり制作を始める。
再構成したものを画面としてキャプチャする事で、見立てではなく風景そのものとして捉え、光景(画面)と風景の境目を無くし、作品化することで物事の捉え方を浮き彫りにして提示する。