内田まる / UCHIDA MARU
● 主な技法:ミクストメディア
人は大人になるにつれて、知識や人脈、経験値などが増え、自身の出来ることの範囲も広がっていく。しかし、それと同時に思春期による心の葛藤が生まれたり、道徳観や倫理観、社会性について知ったりすることで、自分に「素直」に生きることが難しくなっているように感じる。
一方、22年間の人生を振り返り、一番純粋で、充実していたと感じるのは幼稚園~中学時代だった。毎日男女関係なく戯れ、無邪気に生きているだけで、すべてが楽しく満たされていた日々の記憶が蘇る。それらの経験が、現在の「素直で、自分に正直に生きようとする」自身の中核を成していると考える。
今回は、そんな「昔」と「今」のつながりに焦点を当てた自分の様相を作品に表した。タイトルの「今昔一鶏」は「表裏一体」と言う四字熟語から着想を得た。昔の自分が生きていたから今の自分が生きてくる。今の自分が生きているから昔の自分が生きてくる。それらの相互関係が一匹の鶏を中心に紡がれているという意味を込めている。以前からボールペンと水彩を用いた表現に興味があり、それらを活かした作品作りを行ってきた。中心に位置する鶏には自身を投影し、翼を桜の木にしたり、胴体には過去の様々な思い出を巡らせたりするなど、「自分らしさや個性」・「当時の無邪気な姿・生き様」を表現した。また、周りには多種多様な海洋生物や植物を散りばめ、全体の画面を色彩豊かに埋める。従って、老若男女を問わず、たくさんの人々との関わり合いや経験の中で楽しく、感情豊かに過ごしていた様子を感じ取ってもらうだけでなく、それらが、現在の裏表がなく、ありのままに生きようとする内田まるの原点であるということも知ってもらえると嬉しい。

内田まる Profile
1999年 茨城県生まれ
文教大学教育学部美術専修 卒業
◆受賞歴
令和4年文教大学卒業制作展/優秀賞
IAG AWARDS 2022/八犬堂ギャラリー賞、準オーディエンス賞
◆展示歴
2022
・令和4年度文教大学卒業制作展 (埼玉県立近代美術館)
・IAGAWARDS2022(東京芸術劇場)
・リビエラアートフェア(リビエラ東京/池袋)
2023
・文教大学OBOG展(埼玉県立近代美術館)
・犬チュードクvs猫チュードク展4 (boji hair+gallery)
・空想動物図鑑(松坂屋上野)
・今昔絵図展(GINZA SIX)
・たんざく展(伊勢丹新宿)
・たんざく展(新井画廊)
・そのつづき展(GINZA SIX)
◆インフォメーション
2年前のコロナ禍の時期に、近くの書店でたまたま手に取った画集との出会いから、趣味として制作活動を始める。
私にとって絵は思い出のアルバムであり、心の代弁者である。常に自身と対話し、一つの作品として表現することで、生き方や前向きな気持ちを与えてくれる。人と同じ時間を過ごしたり、自然や街を散策したり、普段何気なく生活したりする中で五感を通して様々な感情や思考が溢れくる。そんな一枚の写真を見ただけでは伝わらないその時々の思い出を少しでも共有したい思いが強くある。また、動物好きである。動物園の生き物や愛犬の様子を眺める中で、表情や仕草等からどんなことを考えているのかを想像するのが大変興味深い。
私はコラージュのように組み合わされた動物画を通して、それぞれの動物の愛くるさや心情が感じられるだけでなく、童心を忘れないユニークで色彩豊かな作品を目指して日々探究している。