神谷たお / Tao KAMIYA
● 主な技法:ミクストメディア、インスタレーション
「豚バラ肉」と「薔薇」は本来、駄洒落という希薄な関係によって結ばれている。本作におけるそれぞれの姿の捕捉を試みるとき、作品に近づけば近づくほど「薔薇」の輪郭がはっきりとする一方で「豚バラ肉」はモザイク状になり消滅し、反対に作品から遠ざかれば遠ざかるほど「豚バラ肉」が姿を現す一方で「薔薇」の姿は認識できないほど小さくなる。二者はお互いを物理的に構成しているものの、双方の姿を同時に認識することは難しい。本作ではこのように、本来の駄洒落だけによる関係性のような「希薄ではあるが確かな繋がり」を、視覚的に体験することができるように変換している。
また「豚バラ肉」の最も美しい姿を想像した時、大抵それは調理済みである。調理済みの「豚バラ肉」の美しさを構成する情報のうち、視覚によるものの割合は比較的低く、味覚や嗅覚によって情報の補填が行われることで「豚バラ肉」の魅力が成立している。一方で「薔薇」の場合は、嗅覚による情報も「薔薇」の魅力が構成される上で重要な役割を果たしているのにもかかわらず、視覚的な美しさが高く評価され、しばしば視覚による情報のみが切り取られてデザインとして利用されている。本作では、「視覚による情報に着目されやすい」という「薔薇」の性質を利用することによって、視覚による情報のみで構成された「豚バラ肉」の魅力を顕わにする試みを行っている。
神谷たお Profile
1998年 埼玉県生まれ
2021年 早稲田大学文化構想学部文化構想学科 卒業
◆受賞歴
2023 IAG AWARDS 2023 入選、C-DEPOT 賞
◆展示歴
個展
2022「A BLOCK」ART TRACE GALLERY、東京
グループ展
2018「自由な展示、緊張した空間」デザインフェスタギャラリー、東京
2021「SEE YOU,BOOMER」デザインフェスタギャラリー、東京
2023「空白報告」ギャラリー・ルデコ、東京
◆インフォメーション
1998年埼玉県生まれ。現在も埼玉県に在住。
「作品を鑑賞して下さる方々と自分自身の日常の光景をより一層豊かにしたい」という考えのもと、日頃当たり前に目にしているものを従来の文脈から切り離し、新たな角度からの認識を提案する作品の制作を行なっています。
学生時代に専攻していたメディア論と博物館学を組み合わせた視点によって、鑑賞者が作品から情報をどのように受容するかを分析した上で、制作の際には「現代美術に造詣が深い方々を感心させる質を保ちながら、普段美術と接点のない方々が鑑賞した際にも親しみ易い作品であること」を重要視し、幅広い層の鑑賞者に応じた価値のある経験を提供するという意識を大切にしています。
近頃は樹脂粘土や樹脂を用いて、日常の中にある概念の見過ごされがちな違和感や面白さを発掘し提示する作品を制作しています。