仏師
西 除闇 / Nisi Joan
● 主な技法:流木・生木・雑誌など様々な材に仏像を彫刻
早稲田鶴巻町にあった「現代マンガ図書館ナイキコレクション」で18年間働いていました。
蔵書機能を明治大学に寄贈し図書館が閉館になった際、受け入れされず廃棄が決定した大量の雑誌を見過ごすことが出来ず、退職した翌日に軽トラの荷台に積めるだけ積んで引き取りました。
そうして引き取ったマンガ雑誌を用いて仏像を彫刻し、東寺(京都)の立体曼荼羅を模した配置で展示します。
雑誌というメディアの、高い文化資料価値と、読み捨てられる運命に挟まれた葛藤の中で、それをあえて切り刻み仏像にすることで、かつて自分たちが捨ててきた様々なことに思いを馳せ、内省し、又は供養し輪廻する祭礼装置としてマンガのマンダラを制作します。

西 除闇 Profile
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学 中退
◆受賞歴
2019年 渋谷ヒカリエ「monster exhibition2019」にて最優秀賞受賞
2022年 八王子市夢美術館「夢美エンナーレ」にて奨励賞受賞
同年、渋谷ヒカリエ「monster exhibition2022」にて優秀賞受賞
2023年、第26回岡本太郎現代芸術賞にてオーディエンス賞受賞
◆展示歴
2019年 渋谷ヒカリエ「monster exhibition2019」
同年、パリ「Gallery Grand E’terna」
2020年 渋谷ヒカリエ「DELIRIUM-本能を呼び覚ますアート展-」
2022年 「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2022」
2023年 第26回岡本太郎現代芸術賞
◆インフォメーション
仏教も美術も学ばなかった私と仏像彫刻の出会いは突然で、温泉に行った時、地元産の土産物売
り場で2千円で売られていた流木の仏像を手に取ったのが始まりでした。
「草木国土悉皆成仏」という言葉のように、見捨てられた草木一本にも大切にされるべき命が
宿っているという考えのもと、 彫刻用の材は一切使わず、山川に打ち捨てられた枝や捨てられた
木材などに仏を彫っています。
仏を彫る内に私は、仏教という受け皿から飛び出して、広い意味での「信仰」を彫りたいという
思いを抱きました。 宗教、祈り、迷信、推し。アニミズムの国に生まれた人間は、その運命の
奔流の中でたまたま掴んだ枝や岩に心を寄り添わせることで受け入れ難い現実に救いを見出しま
す。 私の作品の基盤にあるものは、溺れかけていた人が居なくなった川に行き、かつて誰かが
必死でしがみついたであろう枝を見つけ標(しるし)を刻む、巡礼行為です。