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IAG ARTISTS SELECTION
池袋回遊派美術展2021
21/11/17[水]-21/11/22[月] @ 東京芸術劇場 5F GALLERY1

2017年からスタートし、今や国内屈指の公募展となった「IAG AWARDS」に加え、漫画とアートの融合を目指し、漫画家しりあがり寿氏を審査委員長に迎えて昨年実験的に開催した「アート4コマ公募展 漫喜利- MANGIRI-」。
街とアーティストをつなぐ「池袋アートギャザリング- IAG -」が運営する2つの公募展の入選者からセレクトした気鋭アーティストたちによるグループ展です。

三塚 新司 / Shinji Mitsuzuka 

● 主な技法:FRP アクリルフォトプリント

 2020年3月、コロナ禍が世界を覆う中、私は過去のいくつかの災害や事故を思い出していた。私は漠然と、それらに共通する「違和感」を感じていたのだ。
 4月、「新型コロナウイルスの感染拡大は、グローバル化がその一因となった。」との報道を目にした時、私はやっと、その「違和感」の正体を理解した。それは「私たちは『豊かさ』と『リスク』を交換しているのでは無いか、」という疑いから生まれたものであった。
 経済活動により利益を受け取る人々が、その活動の過程で発生するリスクの全てを引き受ける訳では無い事は、本来、自明の事である。むしろ現代という時代を生きてゆく為には、程度の差こそあれ、この「豊かさとリスクの交換」に関わらずに生きてゆく事は不可能だろう。しかし多くの人にとって、それへの「疑い」を持ったまま生きる事は足枷と成る。だとすれば、社会共同体はそれに関わる「疑い」を秘匿し、その事を認知させ難いようデザインされている筈だ。そして、そこで暮らす個々人も、相互補完される「日常」という概念の奥深くへ、「疑い」を隠滅させる事で、互いの共同体の成員としての統合を深めているのではないか、、
 さらに言えば、私達が社会に接続していると感じている部分の本質は、その表層の言葉や分節された意味を取り除けば、その実態はリスクを他者に押し付ける事によってのみの接続でしかないのではないか、、
 コロナ禍の中、私はそのような考えに取り憑かれ、それを作品化したいと願った。そうして夏の少し前に、それには「バナナの皮」が最も適している。ということに気がついた。
 巨大な「バナナの皮」は、そのサイズに見合う巨大な存在の転倒を暗示する。2020年の終わり、私は最初の「バナナの皮」を完成させ、作品のタイトルを「Slapstick(スラップスティック)」とした。

三塚 新司

三塚 新司 Profile

1974年 長野県生まれ

東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科 卒業

◆受賞歴
IAG AWARDS 2018 準IAG賞
Independent Tokyo 2018 入賞 審査員特別賞
UNKNOWN ASIA 2019 審査員賞
UNKNOWN ASIA 2020 審査員賞
神奈川県美術展 2021年 県議会議長賞受賞

◆展示歴
2018 池袋アートギャザリング IAG AWARDS 2018
2018 Independent Tokyo 2018
2018 上海 Shun Art Gallery
2019 スパイラル SICF20
2019 IAG SELECTION展 2019
2019 UNKNOWN ASIA 2019
2020 UNKNOWN ASIA 2020
2021 TAGBOAT ART SHOW
2021 神奈川県美術展
2021 スパイラル SICF22

◆インフォメーション
高校卒業後、スキーパトロール、ライフガード、ソープランドの清掃、自転車便メッセンジャーなどの職を経て、1999年に東京藝術大学へ油絵科受験にて入学。入学後に先端芸術表現科へ一期生として転入し、在学中よりNHKの子供番組の放送作家として映像関係の仕事に携わる。同大大学院、メディア映像学部を中退。
その後、雑誌編集者、テレビ局ディレクターを経て、2016年に千葉県鴨川市に工房を設け、サーフボード制作技法を応用した作品制作をおこなう。
2018年より公募展への出展、作品展示を始める。
2020年、コロナ禍を受け、それまで制作していた作品から離れ、巨大な「バナナの皮」の立体作品を制作する。
作品は現在、疑問の社会的受容に対する「疑い」を元に制作されている。